テクニカルインフォメーション

カラビナのゲート形状 - その種類と性能の違い

2003年時点の情報です

1. カラビナゲートの種類
  左から、ストレートゲート、ベントゲート、ワイヤーゲート
 
2. ゲートオープン間隔の比較
  ストレート、ベント、ワイヤーゲートの順に広くなる。
 
3. デュアルトラックゲート
  ゲート上を走る2本のリブが特徴。
 
4. キーロック型ノーズ
 
 
5. クローズドバックゲート(左)と従来のゲート(右) 左の方がロープを傷めにくい。
カラビナのゲート形状は大きく分けて、ストレートゲート、ベントゲート、ワイヤーゲートの3種類があります(写真1)。ここではゲート形状の違いによる性能と用途の違いについて説明します。
●ストレートゲートカラビナ(写真1.左)
スポーツクライミングからアルパインクライミングまで、オールラウンドに使える形状です。ゲートがミスオープンしにくいため、プロテクション側(ボルトハンガー、ピトンやナチュラルプロテクション側)のカラビナとして広く使用されています。
●ベントゲートカラビナ(写真1.中)
1980年代、フリークライミングの技術は大幅に向上し難度の高いルートが数多く誕生しました。それらのルートでは素速いロープクリッピングが求められ、クリッピング動作そのものが難しいルートも現れて来ました。そのような状況の中、ロープクリッピング性能を追求して生まれたのがベントゲートです。ゲートをくの字に曲げることでロープクリップを容易にし、ゲートオープン間隔も広がりました(写真2.中)。クリップしやすい反面、ロープを通す向きを間違えると、ロープの動きでゲートが開いて外れてしまう、という危険性も秘めています。ベントゲートはロープクリップ側に用いるのが原則です。
●ワイヤーゲートカラビナ(写真1.右)
ワイヤーゲートは1997年、ブラックダイヤモンド社がクライミング用としては初めて市場に送り出しました。ゲートをステンレスのスプリングワイヤーとすることでゲートオープン間隔が大幅に広がり(写真2.右)、ロープクリップのときロープがワイヤーゲートの2点で接するので、安定したクリッピングが可能です。ワイヤーゲートは、ロープクリップ側、プロテクション側、どちらにも使うことができます。
従来のゲートはゲートピン、ゲート内部のスプリング、爪などの複数パーツによって構成されているため、冬期の使用では凍りつくことがありますが、ワイヤーゲートには雪や水が侵入する部分が無く、凍りついたとしても比較的容易に氷を取り除くことが可能です。また、グローブをした状態で扱いやすいゲート形状でもあることから、ウィンタークライミング用のカラビナとしても多く選ばれています。
●デュアルトラックゲート(写真3)
2002年にブラックダイヤモンド社が開発した最新のゲート形状で、ストレートゲートとベントゲートの進化型と言えます。デュアルトラックゲートの利点は、ゲート上に走る2本のリブ(写真3)がハンドリング性能を高めており、ワイヤーゲート感覚の素速いロープクリッピングを可能にしている点です。また、キーロック型ノーズを採用し(写真4)、ボルトハンガーへのクリップ、アンクリップがスムースに行えます。そして、ロープを傷めにくいクローズドバックゲート(写真5)も特徴です。