テクニカルインフォメーション

ヘッドランプの性能表示

2006年時点の情報です

照射距離、電池寿命、そしてIP表示などの項目は、ヘッドランプの性能を比較する上で、大切な情報です。各数値を比較すれば特徴の違いが分かりますが、「何をもって照射距離○mというのか?」あるいは「どの段階で電池の寿命というのか?」「IP表示とは?」などの、一歩踏み込んだ疑問に答えるため、以下の各項目について解説します。

1.実用照度
2.照射距離
3.電池寿命
4.電池の種類
5.IP表示
1.実用照度
照射距離や電池寿命を測定するため、まず実用照度(実際の使用に耐える明るさ:単位はルクス)を定めます。「△ルクス以下では照射距離に到達したとみなさない」「○mで△ルクス以下になった時、電池寿命は切れたと判断する」とするための、基準となる明るさです。
ブラックダイヤモンドでは、この照度基準を「2mの距離で0.25ルクス」としました。これは、満月の月明かりと同等程度の明るさで、

i 夜間にパックの底に入れたものが見える
ii 夜間のクライミングでフットホールドが見える
iii ロープを結んだり懸垂下降の操作ができる

という実用上要求される場面での最低限度の照度として定められました。
この照度を基準として、以下に解説する照射距離などの各項目が算出されます。


2.照射距離
光源から離れるほど照度は下がります。0.25ルクスの照度にまで減光する、光源からの理論上の距離を、計算式により求めます。
照射距離の算出にあたっては、「逆二乗の法則」を用います。
<照射距離(D)の算出>
i :光源から2mの位置の照度(ルクス:E)をE=i/(D×D)に代入。光度(カンデラ:i)を算出します。
ii:次に、照度に0.25、光度に i で算出した数値をE=i/(D×D)に代入すれば、照度が0.25ルクスになる照射距離:Dが求められます。

<計算例>
ベクトラIQ:2mの距離で302ルクスを計測した場合の照射距離

E=302 D=2を E=i/(D×D) に代入

302=i/(2×2)

i =1208となる。

0.25=1208/(D×D)

(D×D)=1208/0.25

D=√4832

D≒70

この場合の照射距離=70m


3.電池寿命
ヘッドランプを点灯させてから、「2mの距離で0.25ルクス」の基準を下回るまでの時間が電池寿命です。電池寿命は、電池製造日からの期間や電池のタイプ、気温によって変動するので、性能比較上の目安と考えて下さい。


4.電池の種類
ブラックダイヤモンドヘッドランプは、アルカリ電池の使用を前提として設計されています。長寿命が特徴のオキシライド電池を使用した場合、ジーニックスIQやベクトラIQのIQ回路が正常に作動しない恐れがあります。また、初期電圧が通常と比べて高いため、バルブの寿命が短くなる恐れがあります。
電池は一般的に低温で性能低下する傾向があります。寒冷地で使用する場合は、電解液に水を使用していないリチウム電池の使用が効果的です。


5.IP(International Protection)表示
IPとは、電子機器の固形物や水に対する保護等級の国際規格表示です。
「IPX7」という表示を例にします。IPの後には、固形物(砂など)に対する保護等級が数字で記載されます。この例の場合はXとなっており、固形物の保護等級は表わしていません。末尾の数字は水からの保護についての等級を表し、0~8までの9段階があります。この例ではそのうちの7番目であることを表わしています。
ブラックダイヤモンドのヘッドランプは、「IPX7」と「IPX4」の2種類の等級を表示しています。それぞれ、以下の防水、防滴性能を表します。

IPX4:いかなる方向からの水の飛沫によっても影響を受けない
IPX7:深さ1mの蒸留水中に没した状態で30分間作動

*IP表示は防水性能比較のための目安であり、使用目的として推奨するものではありません。