SCARPA

2006

スカルパレザーの基礎知識

近年、上級登山靴にもナイロンや人工皮革が積極的に使われていますが、天然素材である革の質感、馴染みの良さにはかないません。特にスカルパ社は、1938年の創業以来、良質の革を追い求め、こだわり抜いてきた老舗メーカーです。今回はスカルパ登山靴に使われている高品位な革についてご紹介します。

革の構造について

動物の皮は大きく分けて表皮、真皮層、皮下組織の3層で構成され、表皮と皮下組織は取り除かれて真皮層のみが革になります(図1)。真皮層のうち、表皮に近い緻密な層を「乳頭層(銀面)」、その下にある目の粗い層を「網状層(床面)」と呼びます。銀面を剥離せずに使った革を「銀付き革」と呼び、風合いが良く耐水性、耐久性に優れます。スカルパではクロスタ以外がこれにあたります。

皮革断面イメージ図
図1
●リバースド・アンフィビオ
銀付き革の中でも最高の耐水性、耐久性を持つアンフィビオレザーを裏返し、床面を表にしてバフィング(サンドペーパー掛け)したもの。3mm以上の厚みを持ち、耐久性とサポート性を要求される重登山靴に使われます。風合いはスエードに似ていますが、耐水性、耐久性の要となる銀面を内側に持ち、非常に高性能な革です。
・お手入れ:スエードブラシで泥や埃を取り、毛並みを整えて撥水スプレーで仕上げて下さい。撥水スプレーは保革効果のあるものがお勧めです。色落ちが気になる時はヌバック/スエード用の補色スプレーを使って下さい。
リバースド・アンフィビオ
耐水性/耐久性★★★
風合い★★
しなやかさ
●ワッサー
3mm以上の厚みがある銀付き革で、革本来の滑らかな質感が魅力です。耐久性とサポート性を要求される重登山靴に使われます。
・お手入れ:泥や埃を拭き取ってからHS12クリームで仕上げて下さい。定期的に保革クリームで栄養補給を行って下さい。※HS12クリームに保革成分は含まれません。
ワッサー
耐水性/耐久性★★★
風合い★★★
しなやかさ
●シェルパ
2.7~2.9mmのしなやかな銀付き革で、軽登山靴、トレッキングブーツ等に使われます。
・お手入れ:泥や埃を拭き取ってからHS12クリームで仕上げて下さい。定期的に保革クリームで栄養補給を行って下さい。
シェルパ
耐水性/耐久性★★
風合い★★★
しなやかさ★★★
●ヌバック
シェルパレザーと同じ材質ですが、銀面をバフィングしてきめ細かく起毛させ、鹿革に似た上質感を演出しています。
・お手入れ:スエードブラシで泥や埃を取り、毛並みを整えて撥水スプレーで仕上げて下さい。撥水スプレーは保革効果のあるものがお勧めです。色落ちが気になる時はヌバック/スエード用の補色スプレーを使って下さい。
ヌバック
耐水性/耐久性★★
風合い★★★
しなやかさ★★★
●クロスタ (高品位スエード)
スエードは革の床面を表にしてバフィングしたものですが、スカルパでは特に「クロスタ」と呼ばれる高品位スエードを使っています。「クロスタ」は一般的なスエードよりも緻密な床面を使っており、丁寧なバフィングにより毛足の短い起毛面を持ちます。主にブーツの補強に使われますが、厚手の「クロスタプロ」は、登山靴のアッパーにも使われます。
・お手入れ:スエードブラシで泥や埃を取り、毛並みを整えて撥水スプレーで仕上げて下さい。撥水スプレーは保革効果のあるものがお勧めです。色落ちが気になる時はヌバック/スエード用の補色スプレーを使って下さい。
クロスタプロ
耐水性/耐久性★★
風合い
しなやかさ★★★

HS12トリートメントについて

スカルパの全てのレザーブーツには、HS12トリートメントという撥水加工が施されています。これは革のなめし工程でシリコンを深く浸透させ、撥水性、透湿性、速乾性を高めるもので、革が長持ちし、岩角に対しても高い耐久性を発揮します。同成分を含んだHS12クリームを別売しております。

HS12クリーム