TECHNICAL INFORMATION
最適なバックパックを選ぶことは、登山やハイキングの準備をするうえで最も大切な選択のひとつです。旅に必要なすべての道具を詰めて、長い一日の間ずっと背負い続けていなければいなければならないバックパックは、その旅が快適に、最小限のリスクで過ごすことができるかどうかに大きく影響するといっても大げさではありません。
ここでは、目的や好みに合わせてさまざまなサイズや機能、特徴を備えたたくさんのモデルの中から、自分に合った最適なバックパックを選ぶために必要な知識やポイントを解説していきます。
バックパックの基本的な部位の名前
無雪期の登山やハイキングはもちろん、トレイルランニングやスピードハイキング、アルパインクライミング、冬山登山や山岳スキーなど、バックパックは多様な季節とアクティビティで利用されます。このためバックパックには、それぞれのシチュエーションに最適化された機能やデザインを備えた、さまざまな種類やタイプが存在します。
そこでまずはそれぞれのタイプごとの大まかな特徴について説明します。それらを知ることで、あなたがどのようなタイプのなかから選べばよいのかが分かるようになるはずです。
ハイキング向けバックパック
険しい岩稜帯を登り下りするというよりも、傾斜の緩やかな山道(トレイル)を歩くことを想定したハイキング用のバックパックは、軽量で丈夫、重い荷物を快適に運ぶことができ、ハイキングでの実用性を考えた収納を備えています。 いつもより重い荷物を、温暖で汗ばむ日に長時間背負っても快適に運べることにフォーカスしたモデルが多く、速乾性と涼しさを保つ背面パネル等を特徴としています。
荷物を必要最低限に絞ってできる限り軽くしたい人のためのバックパック。基本的にはハイキング向けタイプと同じ機能を備えつつ、生地の耐久性や収納・機能などを極限までそぎ落とすことで、とにかく軽さを優先しているのが特徴です。軽さと引き換えとなる性能の限界や取り扱い方法をよく理解している経験豊かなハイカー・登山者に適しています。
バックパッキング向けバックパック
荒れた山道から道なき道の藪漕ぎ、あるいは険しい岩稜帯など、あらゆるラフな地形で重い荷物を担いで長距離歩くことを想定したタイプのバックパックです。重い荷物で長時間歩いても疲れを溜めにくい、安定性と快適性に優れた背面システムに加え、タフな地形での使用にも耐え得る生地の丈夫さ、そして便利に荷物を出し入れできる多彩な収納などを備えています。このタイプのバックパックでは、冬山登山でのギアを収納することも想定されたモデルが多いです。
岩稜や雪稜の登攀を伴うような最も厳しい地形で、できる限り軽快で自由に行動できることを想定したタイプです。歩行時の快適さよりも登攀時の性能や機能性に特化しているのが特徴で、軽量で摩耗や引き裂きに強い素材を使用し、アイスアックスやクランポン(アイゼン)・ロープを携行するのに便利なアタッチメント類が多数用意されています。反面、汎用的な収納類や機能の数は省略されていることが多いです。
主にトレイルランニングやスピードハイキングなど、山道をできる限り素早く走ることを想定して設計されたタイプです。通気性と速乾性に優れた生地を使用し、超軽量のベスト型ハーネス構造によって上半身にフィットし、腕の振りなどによる動きにも柔軟に対応しやすい作りになっています。移動中でも水や行動食にアクセスしやすいストレッチメッシュポケットが多数配置されているのも特徴です。
バックカントリースキー(スノーボード)で使用するために最適化されたタイプです。最大の特徴は雪崩救助の際に必要な安全装備に素早くアクセスできるコンパートメントを備えていることです。その他、スキーの鋭いエッジや雪・凍結にも強い素材、さらにはスキー(スノーボード)やヘルメット、ゴーグルといった通常のスノーギアを効率的に収納できる構造も特徴です。
泊まりの旅行や日常向けにデザインされたタイプのバックパックです。機内持ち込みを考慮したサイズ感や、旅先で長時間背負うことを考慮した快適性、たくさんの荷物を整理してパッキングできる収納など、さまざまな旅のシーンでのわずらわしさを軽減する利便性が追求されています。
ポイント2:バックパックのサイズ(容量)を選ぼう
バックパックのタイプを選んだら、次は「容量」について考えましょう。
当然ですが、バックパックが小さければ必要な荷物を入れられないので、より大容量のバックパックを持っていれば安心なのは確かです。ただ、だからといって大きければ大きいほどいいというわけではありません。大きすぎるバックパックは余分な重さを背負うことになり疲れやすくなりますし、場合によっては中の荷物が揺れることでバランスを崩しやすくもなり危険です。
このため、バックパックは大きすぎず小さすぎず、適切なサイズを選ぶことが大切。そしてゆくゆくは、できる限り多様な山行に合わせた複数のサイズを持っていることが理想です。
バックパックの容量は、大まかに「アクティビティの種類」「山の中で過ごす予定の宿泊日数」、「宿泊スタイル(小屋泊まりかテント泊か)」によって決まります。ここではバックパックのサイズを考える際の基本的な3つのケースを紹介します。ただ、このサイズ分類は厳密なものではなく、その人のスタイルやこだわりによっても当然変わってきますので、あくまでも目安としてお考え下さい。
20~30リットルサイズのバックパックは、主に暖かい時期の日帰りハイキングや登山に適しています。
コンパクトで軽量で体にフィットするため動きやすく、水、軽食、軽いジャケット、カメラやサングラスなどの小物類、そして救急用品などといった日帰りハイキングに必要な最低限の荷物を収納するのに十分です。
ただ、ハイキングにロッククライミングや沢登り、ラフティング、スノーシューイングといった他のアクティビティが含まれている場合には、追加のギアを入れるためにもう少し大きなバッグが必要になる場合があります。
30~40リットルのバックパックは、日帰り装備に加えて防寒着やライナーシーツ等を携行するような、比較的温暖な時期の週末小屋泊まり山行などにちょうどいいサイズです。
登山向けバックパックのバリエーションのなかではちょうど中間に位置しているため、場合によっては日帰り登山やテント泊登山にも応用でき、その意味では最も汎用性が高いサイズといえます。
これらのバックパックは重量と耐久性、背負った時の安定感、荷物の収納性などのバランスがとれているモデルが多く、それだけに各ブランドから軽さを重視したモデルや快適性を押し出したモデル、特定のアクティビティ向けに特化したモデルなど、個性豊かなさまざまな特徴のモデルが発売されています。
小屋泊まりでも寒い季節であれば厚手の防寒グローブや防寒着、ライナーシーツが必要となり、バックパックのサイズも40リットル以上は欲しくなります。
また3シーズンのテント泊ともなれば、テントやスリーピングバッグ、マットレス、食料や調理道具など必要な荷物は一気に増えます。その場合、極力荷物を減らすことができれば40リットルでも不可能ではありませんが、できれば45リットル以上のサイズが欲しいところです。
このサイズのバックパックあたりから全体の重量は10~15kg程度が当たり前になってくるため、重みが肩に食い込んだりしないように、ヒップベルトを含めた背面パネルの作りがより堅牢になり、荷重安定性が高まります。
暖かい季節に3泊以上の長期山行を行う場合や、積雪期にテント泊などの荷物の多い山行の際には50リットル以上のサイズが求められてきます。少し贅沢な荷物を詰めたい短期旅行にも最適です。
大容量のバックパックは、着替え、暖かい寝袋、そして通常は予備のポールが付属する4シーズンテントをより快適に収納できます。
長期山行ではバックパックの重量は20kgを超える場合もあります。これらの大容量バックパックは丈夫な生地を使い、人間工学に基づいた安定性の高い背面システムと、フィット感やクッション性に優れたハーネスによってなるべく肩や腰に負担をかけずに多くの荷物を長時間運べる作りになっています。
収納面でも多様な荷物を出し入れしやすいようにポケットやアタッチメント類、アクセスしやすさなどが工夫されています。
最近では、機能は同じで女性に合わせてデザインされた「女性向けモデル」がラインナップされているモデルが多くなってきました。
これらのモデルは男性用あるいはユニセックスモデルに比べて主に背面長や肩幅の違い、ショルダーハーネスの形状、ヒップベルトのサイズなどで、より女性の体型に合わせたデザインやサイジングを採用しています。
もちろん最終的には男女に関わらず自分で実際にフィッティングしてみることが重要ですが、女性や小柄な方の場合、女性モデルが用意されている製品についてはこちらがフィットする可能性が高いので、試してみることをおすすめします。
バックパックの種類とサイズが決まったら、次は機能や使い勝手に着目します。たとえば同じ容量のバックパックでも、搭載されているポケットや外部アタッチメントの有無によって使い勝手には雲泥の差があります。
もちろん収納や機能は多ければ多いほど良いというわけではありません。ここではいくつかの代表的な収納や機能を紹介しつつ、どのような点に着目して取捨選択すべきかのヒントを説明します。
バックパックの荷室(メイン収納)の開口部にはいくつかの種類があり、荷物の出し入れしやすさだけでなく、それぞれで使い勝手に差があります。
開口部の上に雨ぶたが被さる構造のタイプを言います。30リットル以上程度の登山用バックパックとしては最も一般的な構造で、雨ぶたは文字通り雨を防ぎやすいうえに上からも荷物全体を圧縮しやすく、雨ぶたに付いているポケットに小物を入れておくことができるなど、多くのメリットがあります。一方でそうしたメリットの分だけ全体の重量は軽くしづらく、また荷室内部へのアクセスに手間がかかるなどのデメリットもあります。
小さめのバックパックに多いタイプで、これはジッパーの開閉だけですぐ荷物にアクセスできるという利便性の高さが魅力です。ジッパーが下部まで長く延びていればそれだけ奥の方の荷物にもすぐにアクセスできるのでより便利ですが、その分バックパック全体の重量は重くなっていきます。
開口部を折り畳んでバックル等で留めるロールトップ式開口部をもつバックパックは、容量の圧縮・拡張がしやすく、またパーツを最小限に抑えられるというのが最大の利点です。また防水性も高いことから、なるべく重量を抑えたい軽量タイプのバックパックに多いタイプです。ただし荷物の出し入れは若干手間がかかり、またポケット類が少ないなど 収納の利便性では他の方式に一歩譲ります。
メイン収納の開口部しか出し入れ口がない場合、バックパックの底にあるようなアイテムを出し入れするのはとても厄介です。そんな時に便利なのが、サイドやフロント、ボトム部分に取り付けられたダイレクトアクセスジッパーです。ジッパーを開閉することでここから中身に直接アクセスできるため、出し入れしにくい場所にある荷物も素早く出し入れできるようになります。容量が大きいバックパックほど重宝する機能ですので、必ずチェックしておきたい項目です。
バックパックを背負って長時間歩くと、密着する背中部分はほぼ必ずと言っていいほど汗だくになります。
この汗による不快感を抑えるため、一部のモデルでは背中とバックパックの間に適度な空間を設けた吊りメッシュバックパネルを採用しています。背中を常に風が通り抜ける構造なので熱がこもりにくく、またかいた汗も乾きやすいため暖かい時期のハイキングでは効果的です。また背面のメッシュパネルはクッション性が効いているため身体への当たりも優しく、背負い心地の面でも優れています。
発汗量の多い方や背負い心地を最優先したい方には特におすすめですが、一方で積雪期を含めた通年の利用を考えている方や、荷物の出し入れしやすさや重荷での重心安定性を重視する方には向いていません。
別売りのハイドレーションリザーバーを収納するためのポケットと飲み口のチューブを引き出すポート(孔)が備わっていることで、水を飲みたい時に毎回立ち止まってウォーターボトルを取り出す必要がなくなります。バックパックを下ろさずに素早く水分補給したいトレイルランニングやスピードハイキングなどには便利です。
バックパックの前面に縫い付けられた、伸縮性の高いポケットです。余裕のある大きめのサイズでかさばるアイテムも気兼ねせずに放り込めるので、地図や防水ジャケット、防寒着、その他必要な時にすぐに取り出したいアイテムの収納場所として機能します。
伸縮性のあるサイドポケットは、ウォーターボトルやテントポールなどの細長いアイテムを収納するのに便利です。収納しない時はストレッチ仕様のためスリムになり、 枝などにも引っ掛かりにくくなっています。ウォーターボトルの出し入れがしやすいよう、バックパックを背負ったままでも手が届くようになっている。さらに便利なタイプも存在します。
ショルダー・ヒップベルトポケット
ショルダーハーネスやウエストハーネスに装備された小物用のポケットです。 行動中に荷物の出し入れでバックパックの上げ下ろしをする回数を減らし、無駄な手間を大幅に省くことができます。ショルダーハーネスのポケットにはスマートフォンやソフトフラスクなど、ウエストハーネスには地図やコンパス、行動食、ハンドタオルなどの収納が適しています。
公共交通機関で移動する際などで、アイスアックスやトレッキングポールをバックパック本体に固定するためのアタッチメントです。
バックパックの前面に1〜2個の固定ループが搭載されているのが一般的ですが、クサリ場などで一時的に両手が使えるようにバックパックを背負ったままトレッキングポールを素早くバックパックに仮固定できるアタッチメントを備えたモデルもあります。
スリーピングバッグ収納(2気室構造)
バックパックの底部近くのジッパー付き収納スペースです。荷室の仕切りも装備していることが多くスリーピングバッグやテントを他の荷物と分けて収納するのに便利です。例えば寝袋を過度に圧縮させないためにスタッフサックを使いたくない場合や、テント以外の荷物のパッキング後、最後に撤収したテントを収納したい場合などに便利です。もちろんこのスペースには、すぐに取り出したい他の荷物を収納することもできます。
長い時間雨に降られると(防水モデルでない限り)雨がバックパックの中にまで浸水してきてしまいますので、それを防ぐためにもレインカバーを持っていると安心です。単体でも販売されている藻で絵うをバックパック本体に付属している と セットで販売されているモデルを選ぶとスマートです。
一部の大型モデルには、サブザックやヒップベルトパックとしても使える取り外し可能なポーチが付属しています。最低限の荷物だけで縦走途中の山頂を往復する場合には荷物を軽量コンパクトにできて便利です。
最後に、バックパック選びで最も重要なポイントを確認します。それはバックパックのフィット感であり、これを判断するには実際に試着することが不可欠です。
重い荷物を長時間背負うと身体に大きな負担がかかるため、特に初心者にとっては、自身の身体に合った快適なバックパックを選ぶことが極めて重要になります。
バックパックのフィット感を確認する際は、以下の点に注目しましょう。
首の後ろの一番とび出している骨(第7頸骨)から腰骨上端までの長さを指します。多くのバックパックは背面長に合わせてサイズ展開されており、調整可能なモデルも多いため、自身の背面長を測り、それに合ったサイズを選ぶことが基本です。
肩口から脇下に伸びるショルダーハーネスは、肩幅に合い、しっかりと肩に乗っていることが理想です。幅が広すぎたり狭すぎたり、長すぎたり短すぎたりしないか、肩に違和感や擦れなどがないかを確認しましょう。
荷重を腰に分散させるための重要な部分です。ヒップベルトのパッド部分が腰骨をしっかりカバーするだけの十分な長さがあるか、また逆に長すぎて締めても緩すぎないかどうかを確認します。そのうえでパッドが薄い、細い、硬いなど、試着時点で不安がある場合は注意が必要です。
正しいサイズのモデルを選んだら、できる限り重りを入れて本番に近い状態で背負ってみることをおすすめします。身体に正しくフィットしたバックパックの場合、荷重全体の7~8割程度をヒップベルトで支え、残りの2〜3割荷重をショルダーハーネスや背面パネルで支えているという状態が理想といわれています。実際にバックパックを背負ってみてそうした荷重バランスがとれているか、当たり具合に違和感や擦れる箇所がないか、身体を左右に振ったときにバックパックが不必要にブレやすくないかなど、総合的な背負い心地を身体全体で感じて確認してみてください。
登山用バックパックは実際にフィッティングしてみることが重要と述べましたが、正しいフィッティング方法についてはこちらのページでも解説しています。ぜひチェックしてみてください。
https://www.lostarrow.co.jp/osprey/support/tech/fitting.html
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
用途、サイズ、機能、フィット感といった基本的な要素を押さえれば、あなたのアウトドア・ライフにぴったりのバックパックがきっと見つかるはずです。
ここまでご紹介した選び方のポイントを参考に、下のリンクからあなたのスタイルにぴったりのバックパックを見つけていきましょう。
(著者・出典・背景重要)