トビン・シーゲル:オフシーズンのトレーニング

2017.11.1

BDアスリート、トビン・シーゲルは非常にハードな滑降をする。冬の間、雪面にハッキング*したり、落差数マイルの急傾斜のオフピステを滑降したりして過ごすが、シーズンが終わればスキーから離れた時間を楽しんでいる。しかしただソファでNetflixをダラダラ観て過ごすということではない。オフシーズンのトレーニングに励み、身体の調子を維持しているのだ。今回は、カナダB.C.州出身のトビンが、来る冬に向けてオフシーズンに身体を鍛える秘訣を教えてくれる。

*訳者註:加速をつけて身体を空中に放り投げるようにドロップすること。


冬に向けて、私は普段から体調管理をしっかりとしたいと思っています。ですが、スキーシーズン中にどれだけ念入りに自分の身体をケアしても、シーズンが終わる頃には身体はかなりボロボロです。たいていは、身体のあちこちに小さな痛みがあるだけなのですが(この幸運がいつまでも続きますように)、放っておくとこれが積み重なって、やがてツケが回ってきます。この些細な痛みのケアを怠れば、次の冬までに大問題に発展する可能性もあります。オフシーズンは次のスキーシーズンの始まりである、と私は考えているので、再び雪が舞い始めたとき万全の状態でいるために、計画的に準備を行うようにしています。

私は、オフシーズンを3つのフェーズに分けて考えています。

1.休息
1か月間、トレーニングやスキーのことなど、何も考えず過ごすようにしています。自転車に乗ったり走ったりしたくなったら、それはそれでいいのですが、体系的なトレーニングをするとか何か成果を出すとか、そういうことは頭から追いやります。この期間は、精神的にも身体的にもちょっと休息するためのチャンスなのです。
2.夏のトレーニング
晴れているし暑いので、ジムに行こうと思う人はいないでしょう。ジムに行かずに身体を鍛えられるのが夏のいいところです。自転車、ヨガ、クライミング、トレイルランニング。それに湖もクロストレーニングにうってつけの場所です。今回の記事では、私が特に気に入っている夏のトレーニングメニューについてお話ししようと思います。
3.秋のトレーニング
私が住んでいる太平洋岸北西部では、秋はモンスーンの季節です。たまに訪れるカラッと晴れた日に、運よく野外に出て乗馬や登山ができることもあるかもしれません。しかし、夏はすっかり過ぎ去り、冬が目前に迫っています。ジムでハードなトレーニングに取り組むべき時期です。私の場合、ピリオダイゼーションを使ったジムトレーニング計画を立てます。夏の楽しいトレーニングをさらに洗練させ、スキーに特化した内容にします。これについては、今後別の記事で詳しくお話しようと思っています。

では…ここからは、来たる冬にやりたい冒険をするために、私が夏に何をしているかをお話しします。

クライミング

Photo:
Tobin Seagel

岩の上で身体を動かしていく感覚が大好きです。スメアリングしている足にちょっとだけ体重を乗せたり抜いたり、小さなホールドを掴むために体を上に伸ばしたり、傾斜の強い壁でポケットを持ってグイと引きつけたり…。クライミングでは、体幹の強さやバランス感覚、自己受容感覚(自分の身体を思い通りにコントロールする感覚:訳者注)、問題解決能力が必要とされます。クライミングは、スキーヤーにとってメリットの多いアクティビティです。あらゆる方向に筋肉を動かすことで、長い冬シーズン後の身体のバランスを整えることができるのです。

また、山岳スキーヤーにも有益です。夏の間、クライミングをしてランナウトを味わえば、ロープワークは衰えませんし、精神力も鍛えられます。露出感のあるラインを滑るのが苦手な方は、夏にクライミングに励んで、あの目眩がするような感覚に慣れるのもいいかもしれません。

ヨガ

Photo:
Ally Stocks

私の身体の硬さはツーバイフォー材並みです。なぜこんなにヨガを避け続けてきたのか、自分でもよく分かりません。ですが、今にして思えば、ヨギーだらけの教室に入って自分が何をしているのか分からなくなったらどうしよう、と少し怖気づいていたのだと思います。初心者にとってのヨガは、船長さんの命令ゲーム*で船長が訳の分からない指示ばかりする状況みたいなものです。「OK、さあ皆さん、アナハタチャクラを開きましょう。」えっ、なんだって?男性がヨガ教室で女性のことをじろじろ見ていると、普通は怒られます。たしかに、怒られて然るべき場合もあるでしょう。でも、まるで分からなくなってキョロキョロしている男性もいるのです。

*訳者註:子ども向けのひっかけゲーム。リーダー役が「船長さんの命令」と言ったときだけ指示に従い、何も言わないときの指示には従わない。

しかし今年は、シーズン中にハードなフラットランディング(私の得意技です)を行ったため、膝が炎症を起こし何か月も治らないままでした。かかりつけの理学療法士からはずっとヨガを勧められてはいたのですが、このままでは怪我の慢性化の恐れがあったのでついに今年やってみることにしました。無料のオンライン体験ヨガ教室を受講してみたのです。オンラインヨガのインストラクターは、今何をしているのか分かりやすく説明してくれました。どうしても分からないときは、ビデオを一時停止することもできます。それに加えて、キョロキョロと他の受講生を見回して気まずい気分になることもありません。部屋には私一人しかいないのですから。受講した翌日、膝の調子がよくなっていました。もう一度受講してみると、やはり膝の状態が改善していきました。いまでは、スキーシーズンが終わるとほぼ毎日ヨガをしています。私の身体は、ここ何年かの間で最も柔軟で身軽です。

マウンテンバイク

Photo:
Tobin Seagel

冬以外の季節に行うアクティビティの中で、最もスキーに似ているのはマウンテンバイクだと思っています。マウンテンバイクに乗って行く場所が大好きです。20分程度で家の近くを一周するときもあれば、バイクパッキングの旅に出て、ブリティッシュコロンビア州内の延々と続くシングルトラックを何日もかけて走ることもあります。長時間ペダルをこぎ、下り坂を流れるように進むときの感覚は、瞑想に近いものがあります。スキーをしているときと同じように、私の心は彷徨い、自分の走りを俯瞰的な視点で見ているような感覚になります。

スキーツーリングのクロストレーニングでウィスラーの急坂をマウンテンバイクで上がると、スタイルや乗り方にもよりますが、心肺への負担がかかり、脚のパワーと持久力が上がっていきます。マウンテンバイクは膝の回復にも良い影響を与えている、とトレーナーからお墨付きももらいました。ジムに行かずに野外で運動していた方が良いってことですね!また、ガレた急坂にドロップインしたり空中に飛び出したりするのは、本当に恐ろしいです。スキーのときと同じくらい胆力を要します。でも、夏の間に恐怖に慣れておけば、冬になったときの心の準備が少しだけスムーズになります。

トレイルランニング

Photo:
Ally Stocks

私にとって、トレイルランニングは心肺を鍛えるためのものです。もちろん、自転車での有酸素運動も十分行っていますが、トレイルランニングでは勾配や道の状況がたえず変化するので、インターバルトレーニングと似たような効果を得られます。そして、たいていは心肺への負荷は自転車のそれよりも高くなります。少なくとも週に1回はトレイルランニングをして、身体に刺激を与えると同時に、自転車を休むようにしています。私のように膝の怪我を治している最中の方は気を付けてください。膝の状態が100%になるまでトレイルランニングは控えた方がいいかもしれません。

水泳(湖での昼寝、とも言う)

上手に泳げるようになりたいと思ってはいるのですが、実のところ、泳ぎは大の苦手なんです。私のガールフレンドは競泳の選手だったのですが、私の泳ぎを「死に物狂いっぽい感じ」と表現します。実は、湖でリラックスすることを「泳ぐ」と言っているだけなんです。リラックスは夏の活動の一部であり、身体の回復という意味でとても重要です。湖が健康に良いことを示す理屈をお探しであれば、湖は夏のサウナのようなものだと考えてください。熱い、冷たい、熱い、冷たい。この繰り返しです。水の中に入って、桟橋で太陽に焼かれて。これを繰り返しましょう。

Photo:
Dave Smith

以上、このようにして、夏のトレーニングを楽しむことができます。冬に報酬を得るためなら、ちょっとした努力をする価値はあります。

次回『オフシーズンのトレーニングーパート2:ジム編』にもご期待ください。すばらしい冬にするためのピリオダイゼーショントレーニングやハードなワークアウトについて詳しくご説明する予定です。

-- トビン・シーゲル
(原文リンク)