テクニカルインフォメーション

クライミングアックスの特徴と用途

2006年時点の情報です

近年、アイス/ミックス、アルパインそれぞれの分野で高難度ルートが開かれており、それに伴いクライミングアックスの種類も多様化しています。
ここではブラックダイヤモンド社の代表的なクライミングアックス3機種(フュージョン、リアクター、バイパー)の特徴と用途をご紹介します。
写真1:左からフュージョン、リアクター、バイパー
<リーシュレスアックス>
リーシュレス(リーシュを用いないスタイル)でのトライが普及し、リーシュレスアックスのバリエーションが豊富になりました。ブラックダイヤモンド社でもフュージョン、リアクターの2機種をラインナップ。リーシュのサポートを敢えて排除し、アックスの持ち替え、アックスを利用したヒールフック等の新しいテクニックを実現しています。最近はスポートミックスのみならず、アルパインクライミングでもリーシュレスの道具とテクニックを取り入れた例があります。
●フュージョン
フッキング性能を極限まで高めたドライツーリングモデル
特徴
・優れたフッキング性能:従来のアックスよりシャフトカーブが強く、エッジに対するピックの角度が大きいため、前傾壁でもピックがはずれにくく、フッキング時の安定性に優れます(写真2左)。またグリップの上下どちらを握っても、ピックの角度を一定に保てるようデザインされており、フッキング時の持ち替えがスムーズに行えます(写真3)。
・堅牢なフュージョンピック:フッキングやトルキングでの強い負荷を考慮し、先端を厚くしたフュージョンピックを採用。スティンプル(アンダークリング)の安定性を高めるために、ピック上部には歯が刻んであります(写真4左)。
・アジャスタブルグリップ:スペーサーの増減により手の大きさ、グローブの厚さに合わせてグリップ長を細かく調整できます(写真4右)。
用途
アイス/ミックス・コンペティション、傾斜の強い高難度ミックスルート等にお勧めします。
写真2:グリップの角度を揃えた場合、エッジに対するピックの角度がフュージョンは大きく、リアクターは小さい
写真3:グリップの上下どちらを握ってもピックの角度は変わらない
写真4:上部に歯が刻まれたフュージョンピック(左)と、グリップ長を調整できるアジャスタブルグリップ(右)
●リアクター
アイス、アルパインにも使える汎用リーシュレスアックス
特徴
・バランス重視のシャフトデザイン(写真5):シャフトカーブはバイパーをベースにしており、フュージョンよりも緩やかです。このため脆い氷を割ることなく打ち込みでき、アイスクライミングや、クラッシックなミックスルートにも適しています。
・アルパインクライミングに対応した装備(写真6):ピトンを打ち込むマイクロハンマー、雪稜歩行用のスパイク、クリップ用のスパイクホールを備えています。ピックは脆い氷、硬い氷にも刺さりやすい薄刃のレーザーピックを採用。
用途
フュージョンより用途が広く、アイスクライミングや、難しいミックスとデリケートなアイスが混在するアルパインルートにお勧めします。
※リーシュレスでは常にアックスを落とす可能性があり、ビレイヤーに危険を及ぼしたり、クライミングが継続できなくなるおそれがあります。このような事態を避けるため、スパイクホールからバックアップを取って下さい(写真7)。
写真5:グリップを揃えて並べると、リアクターのシャフトカーブの方が緩やかなのが分かる
写真6:左からマイクロハンマー、スパイク、レーザーピック
写真7:バックアップ
<ノーマルアックス>
オーソドックスなベントシャフトと大型のハンマー/アッズ、スパイクを備え、用途を選ばない汎用性が魅力です。
●バイパー
ウィンタークライミング全般に使えるオールラウンドアックス
特徴
・汎用性の高いシャフトデザイン:良好なスウィングバランスを実現すると同時に、オーバル断面シャフトの採用により、氷との間に十分なクリアランスを確保しています。
・ウィンタークライミングのあらゆる状況に対応する装備:作業性の良い大型ハンマー&アッズ、刺さりの良いスパイク、振りをサポートし腕への負荷を軽減するピンキーレスト等を備えています。またスパイクホールにクリップして、体重を預けることもできます。
・リーシュレスにカスタマイズ可能:06/07モデルにはバイパーファング(写真8右)が標準で付属、リーシュレスアックスとしても使えます。また、別売のバイパーストライク(写真9)を装着すればアックスの持替が容易になり、ドライツーリングでの使い勝手が向上します。※バイパーストライクの使い方はサポートページ「バイパーのリーシュレス・アクセサリー」をご参照下さい。
用途
ウィンタークライミング全般にオールラウンドに使用できます。
写真8:通常状態のスパイク(左)とバイパーファングを取り付けた状態(右)
写真9:バイパーストライクを取り付けた状態