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O1、O2、O3バインディングの特徴

2006年時点の情報です

ブラックダイヤモンドのテレマークバインディングは、どれもフロントケーブルの出口がブーツの底面側に配置された独特なデザインをしています。
06/07シーズンからはO1(オーワン)バインディングが、O2(オーツー)、O3(オースリー)バインディングの上位機種として新たにラインナップされ、より選択の幅が広がりました。ここでは、バインディングデザイン上のポイントになる3箇所に焦点をあて、それぞれの特徴についてご紹介します。
O2バインディングのカートリッジの配置 O1バインディング(新製品) O2バインディング O3バインディング
1.コバ押さえ部分の形状
この箇所は、テレマークバインディングをデザインする上でとても重要です。
ブーツのコバをしっかりとホールドするためには、コバの上面を押さえる部分は幅が広くフラットなほど効果があります。しかし一方では踵を上げにくくする方向にもなるため滑走重視か、歩行重視かで形状が変わってきます。
また、O1、O2、O3の各バインディングのトープレートは、信頼性が高く、頑丈なステンレス製ワンピース構造を採用しています。

O1バインディング(写真1)
3モデル中、最もブーツからのパワー伝達性能に優れたバインディングなので、コバの上面を押さえる部分は、幅があり、押さえる面積も広くデザインされています。また、写真の矢印部分をフラットにデザインすることで踵が上がっている時でもブーツのコバをしっかりとホールドします。

O2バインディング(写真2)
O1バインディングほど強力ではありませんが、O2もパワー伝達に優れたバインディングです。トープレートのコバの上面を押さえる部分は、幅こそO1バインディングよりもスリムですが、フラットなデザインにしてあるので、O1同様にブーツのコバをしっかりとホールドします。

O3バインディング(写真3)
3モデル中、最もツアーに向いたバインディングです。トープレートのコバの上面を押さえる部分をO1、O2バインディングよりもスリムにし、かつ写真の矢印部分を上方向に盛り上げる形状にすることで、押さえる面積を狭くデザインしています。このため歩行時の踵の上がりが自然になるようにサポートします。
オーワンのコバ押さえ 写真1.オーワン 写真2.オーツー 写真3.オースリー
2.コバ押さえ部分からケーブル出口までの距離
3モデルともケーブルの出口がブーツ底面側にあるため、コバ押さえ部分からケーブルの出口までの距離は、テレマークスタンスでの踵のあげやすさと爪先付近の踏み込みやすさに密接に関係しています。ブラックダイヤモンドのテレマークバインディングに共通する特徴は、内足側(踵が上がる足)の強い踏み込みが可能だということです。

O1バインディング(写真4:左側)
コバ押さえ部分からケーブルの出口までの距離が最も長くデザインされているバインディングです。踵が上がったときに爪先付近を「面」で踏みやすくし、下方向への押しを強める効果があります。このためハイスピード滑走時に内足側の安定した押さえを体感することができます。

O2バインディング(写真4:中央)
O1バインディングに準じて距離を長くデザインしてあります。この距離が長過ぎると踵の上がりを悪くしてしまうデメリットが出てくるため、踵が上がる内足側を「面」で強く踏めて、かつ踵の上がりの抑制も最小限になるようにバランスが取られています。

O3バインディング(写真4:右側)
3モデル中、最もこの距離を短くデザインしてあります。これは前記したコバ押さえの形状と合わせて、踵の上げやすさを特に考慮しているためです。爪先付近を「面」で押さえる効果は、O1、O2バインディングに一歩譲りますが、歩行時の自然な踵の上げやすさは、ツアーを積極的にするスキーヤーには扱いやすいモデルになっています。
写真4.O1、O2、O3のケーブル出口の比較:O1が最も後ろ側、O3が最も前側に出口がある
3.シリンダーカートリッジの配置
シリンダーカートリッジがブーツの底面側に配置されているのは、テレマークポジションを取った際、内足側の踵が上がり始めると同時にスプリングに負荷がかかるようにしているためです。これはターンの切替時に素早く足の入替動作が可能になるので、ハイスピードターンはもちろん、不整地ターンでも威力を発揮できるデザインです。

O1バインディング(写真5)
シリンダーの配置は、トープレートに向かって広く、ヒールレバーに向かって狭くなっています。この「ハ」の字型のレイアウトには、ケーブルバインディングでありながら「ねじれ剛性」を格段に高めている効果があります。このためスカルパTレースやT1といった高剛性プラスチックブーツのパワーをダイレクトにスキー板に伝達することが可能です。

O2バインディング(写真6)
シリンダーの配置は、トープレート側からヒールレバー側にかけてほぼ平行にレイアウトされています。01、03バインディングの原型となっているこのモデルは、シリンダーカートリッジのスプリングが最も効率よく作用します。レースやエキスパートが求めるスピードレンジで的確なスキー操作ができ、かつ中級レベルでもスカルパT2Xクラス以上の剛性のあるプラスチックブーツと組み合わせればその効果は充分に体感できます。

O3バインディング(写真7)
シリンダーの配置は、トープレートに向かって狭く、ヒールレバーに向かって広くなっています。O1バインディングとは反対に「逆ハ」の字型のレイアウトには、スカルパT3のようなソフトフレックスのブーツでも踵の上がりをスムーズにする効果があります。O1、O2バインディングほどダイレクトにスプリングのテンションを感じられませんが、テレマークポジションを自然に行えるメリットがあります。
写真5.オーワンはハの字型 写真6.オーツーは平行型 写真7.オースリーは逆ハの字型
4.オーワンのツアーモード
O1バインディングは、コバ押さえ部分の形状、ケーブル出口までの距離、シリンダーカートリッジの配置、どれを見てもアグレッシブに滑走するための構造になっています。ねじれ剛性を高くできるのは大きなメリットですが、踵が上がりにくいことにもつながっています。これを解消するためにO1バインディングは、ツアーモードを装備しています。歩行時はツアーモードに切り替えることで、O2、O3バインディングよりも軽快に踵を上げることができます。
ツアーモード機構で特に工夫されている点が次にあげる3点です。
1.ツアーモード時に稼動する軸部分は、トープレートにもピボットピンが通っているため、強度面の信頼性が高い。(写真8)。
2.雪が付着しやすい台座側には、アンチスノープレートが装着してあり、ビスや金属が露出しないようになっている。(写真9-a)
3.アンチスノープレートに接触するトープレートの下側は、船底のように中心が盛り上がっていて、足を踏み下ろした時に雪を除雪する効果がある。(写真9-b)
写真8.オーワンのピボット軸はトープレートを貫通 写真8.アンチスノーシステム