テクニカルインフォメーション

クライミングスキンのグルートラブルを防ぐ

2007年時点の情報です

クライミングスキンではプラッシュ(毛)側の登行性能や滑走性能も重要ですが、それ以上にグルー(接着剤)側の接着力が重要です。フィールドでグルーにトラブルが発生すると、その後のツアーに支障を来すことがあります。ここではグルートラブルの症状と原因、トラブルを防ぐ保管方法をご紹介します。
1. グルートラブルとは?
グルーが水分を含んでしまい、ドロドロ状に糸を引くような症状になることを指します。この状態でスキーに貼り付けると接着力が低下するばかりでなく、剥がした時にグルーが転写されたようにスキーの滑走面側に残ってしまい、グルー本来の性能を発揮できなくなります(写真1)。こうなるとグルーを貼り替えない限り元通りにすることはできません。
写真1:スキー滑走面に残ったグルー
2. グルートラブルの原因
グルートラブルの大きな原因に保管方法があります。クライミングスキンは雪上で使用するものですが、グルー自体は水分を嫌います。一時的に濡れた分にはグルーの接着力が落ちることはあっても、すぐに変質することはありません。しかし、濡れたままのクライミングスキンをスタッフバックに入れて保管したり、気温が高く風通しの悪い場所に保管すると、蒸れによりグルーがドロドロ状になってしまいます。また、蒸らされた状態で直射日光が当たる場所やストーブの熱気が当たる乾燥室、暖かいクルマの車内等に放置すると、グルートラブルの可能性は更に高くなります。
3. グルートラブルを防ぐには
●完全に乾燥させる
グルートラブルを防ぐには、クライミングスキンを完全に乾燥させることが第一です。湿気が少なく風通しの良い室内で、数日間自然乾燥させるのが理想的です(写真2)。一見プラッシュ側が乾燥していても芯材が湿っていることがありますので、十分に時間を掛けて乾燥させて下さい。ストーブ、ドライヤー等を使った強制乾燥は避けて下さい。
●長期保管
保管が長期にわたる場合は、グルーを保護するために左右のクライミングスキンの接着面にチートシート(写真3)を挟んで貼り合わせます(写真4)。チートシートはカットしたスキンの1/2の長さにカットし、それを2枚並べて挟んで下さい。この時、貼り合わせ面がずれてグルーが露出しないことが大切です。貼り合わせたら折り畳んで付属のスタッフバッグに収納し、32℃以下の冷暗所に保管して下さい。気温差の大きい場所に保管すると、結露によりクライミングスキンが水分を含み、グルーが変質する可能性があるので、気温差の少ない場所に保管して下さい。
●短期保管
シーズン中で使用頻度が高い場合は、片側のクライミングスキンを接着面同士で貼り合わせるように半分に折り、その間にチートシートを挟んで下さい(写真5)。次にすぐに使用する場合も、なるべく長く吊るし干しし、使用前にスタッフバッグに収納して下さい。
写真2:吊るし干しが理想的
写真3:チートシート
写真4:長期間保管時の貼り合わせ方 写真5:短期保管時の貼り合わせ方