テクニカルインフォメーション

ビレイディバイス使用上の注意

2009年時点の情報です

ビレイは難しい操作ではありませんが、正しく、最大限の注意を払って行う必要があります。ビレイヤーはクライマーの墜落を止める役割を担っており、失敗は許されません。ここではリードをビレイする際の基本的な注意点を解説します。
■2つのフリクションモードについて
ATCスポーツ、ATC-XP、ATCガイドの3機種では、セットする向きを変えることでRFM(レギュラーフリクションモード:写真1)とHFM(ハイフリクションモード:写真2)を選択できます。RFMは一般的なモードで、スムーズにロープを繰り出すことができ、制動時の衝撃も緩やかです。HFMはRFMの3倍の制動力があり、細径ロープのビレイや体重の重いクライマーのビレイに適していますが、制動時の衝撃はRFMより大きくなります。状況に応じて適切なフリクションモードを選ぶことが、安全でスムーズなビレイのコツです。
写真1:レギュラーフリクションモード(RFM) 写真2:ハイフリクションモード(HFM)
■正しいセットの手順
・必ずビレイグローブを着用して下さい(写真3)。これにより不意にロープが流れた際に、手を火傷したり、止められなかったりするリスクを軽減します。革製のしっかりしたグローブをお勧めします。
・ハーネスのビレイループに、ATCスポーツ付きのロッキングカラビナをセットして下さい(写真4)。
・ロープをU字にしてATCスポーツの穴に通して下さい(写真5)。この時、クライマー側のロープが上、ブレーキハンド側のロープが下になるように通して下さい。
・U字に通したロープとATCスポーツのワイヤーケーブルの両方を、ロッキングカラビナにセットして下さい(写真6)。
・ロッキングカラビナのロッキングスリーブをしっかりと締めて下さい(写真7)。
・これでビレイ器のセットは完了しました(写真8)。
写真3 写真4 写真5
写真6 写真7 写真8
■誤った使い方
・逆向きにセットしないで下さい(写真9)。
・ロープとケーブルが交差した状態でセットしないで下さい(写真10)。
・ロープ同士を交差させないで下さい(写真11)。
写真9 写真10 写真11
■繰り出し
クライミングの進行を妨げないように、スムーズな繰り出しが要求されます。ロープには適度な弛みを持たせ、クライマーの動きに素早く対応できる体勢を作って下さい。ロープを張りすぎたり、弛ませすぎたりしないように注意して下さい。
■制動
墜落を止める際はブレーキハンドでロープをしっかり握って下向きに引いて下さい(写真12)。ATCスポーツのクリートもしくはエッジにロープが押しつけられることで摩擦が発生し、墜落を止めることができます。クライマーを降ろす際はロープを繰り出すよりも、下に引いていたブレーキハンドを少しずつ戻していくようにすると、引っ掛かりなくスムーズに降ろすことができます(写真13)。
写真12 写真13
■その他の注意点
ビレイ中、いかなる場合でもブレーキハンドをロープから離さず、不意の墜落にも対応できるようにして下さい。また、安全のため必ずビレイグローブを着用して下さい。ビレイ中は、常にロッキングカラビナのロッキングスリーブが緩んでいないことをチェックして下さい。