テクニカルインフォメーション

クライミングスキン、グルーリニューの方法

2009年10月20日時点の情報です

スキーツアーにおいて最も重要な道具の1つであるクライミングスキン。しかし、どんなに気をつけていても使っているうちにグルー(接着剤)にゴミがついて接着力が落ちたり、保管状況が悪いとグルーが劣化(ベタベタに変質)することがあります。これらのトラブルでせっかくのツアーを台無しにしないためにも、スキーシーズンを迎える前にクライミングスキンの状態をしっかりとチェックし、必要に応じてグルーリニュー(接着剤の張り替え)を施しましょう。

ここでは、クラインミングスキンのグルーリニューの手順と注意点を詳しく紹介します。多少手順が複雑ですが順を追って作業すれば難しくはありません。ツアーの大切なパートナーであるクライミングスキンを自分の手でリフレッシュさせ、今シーズンを気持ちよくスタートしてみてはいかがでしょうか。

作業の準備
グルーリニューにはクライミングスキン本体の他、下記の道具や材料を使用します。作業は長机等の固く平らな場所で行いましょう。
・ ブラックダイヤモンド グルーリニュートランスファー
・ ホットスクレイパー (登山用品店等で販売されているもの)
・ 家庭用アイロン (アイロン面にスチーム穴が無く平らなもの)
・ ローラー (壁紙用ローラー等)
・ ヘアドライヤー
・ はさみ、カッターナイフ
・ ガムテープ (布テープ又はOPPテープ)
・ 新聞紙、ダンボール
・ 輪ゴム
※ 熱くなる道具は、火傷や火災を起こさないよう十分注意してください。
※ 作業台や衣類は汚れたり傷ついたりしても良いものを使用してください。


補修パーツとして販売されている、ブラックダイヤモンド・グルーリニュートランスファー。幅130mm×長さ205cmまでのクライミングスキンに対応します

1. クラミングスキンを置く
クライミングスキンを折り返してティップループを取り付けるモデルは、折り返し部分をはがしてティップループを取り外します。
新聞紙を下に敷きクライミングスキンの接着面を上にして置きます。
※ 下に敷く新聞紙は横半分にカットしたサイズが使いやすく、グルーが付着したら取り替えます。

2. センターテープをはがす
接着面にセンターテープが貼ってあるモデルは、30cmくらいづつヘアドライヤーで暖めて丁寧にはがします。センターテープの両端がミシン縫いやリベットで固定されている場合ははさみを使ってテール側を切り離します。
センターテープは再利用します。作業のじゃまにならないよう、接着面同士を2つ折りに合わせてから輪ゴムでまとめておきます。


両端が固定されている場合はカット

3. 古いグルーの除去
ホットスクレイパーをよく暖めグルーを取り除きます。右のイラストのように縦方向に45度、横方向に30度の角度を目安にクライミングスキンにあて、ゆっくりまっすぐに移動させると効率よくグルーを取り除くことができます。
ホットスクレイパーにたまったグルーは適宜ダンボールの縁に擦り付けてクリーニングしましょう。


ホットスクレイパーをあてる角度


ホットスクレイパーのクリーニング



4. 折りグセをとる
重要:グルーの張り付け作業がスムーズに行えるよう、収納/保管時についたクライミングスキンの折りグセをとります。

下に敷く新聞紙を取り替えます。
クライミングスキンの接着面を上にして置き、細長く切った新聞紙を被せ、その上から軽くアイロン(高温)をあてて折りグセやシワを伸ばします。上に被せた新聞紙はアイロンをあて終わった部分からすぐに取り除きます。アイロンをあて過ぎるとクライミングスキンの縮みが大きくなりますので注意しましょう。
※ 接着面に被せる新聞紙は白黒印刷のページを使用してください。カラー印刷は色写りする場合があります。



5. 新しいグルーの張り付け
下に敷く新聞紙を取り替えます。
グルーリニュートランスファーをクライミングスキンの長さより2~3cm長めにカットします。グルーリニュートランスファーの台紙を片面のみはがし、グルー面が上になるように置きます。はがした台紙は(7)の行程で使いますので、捨てずに取っておきます。
※ グルーリニュートランスファーは両面に台紙が貼ってあり、このうち片方がはがしやすくなっています。

クライミングスキンの一方の末端を張り付けてから、もう片方の末端を下ろすようにしてグルーに張り付けます。この時クライミングスキンがグルーからはみ出さないよう注意してください。もし、張り付けがズレた場合は(7)の行程で修正することができますので張り直しは避けてください。
※ 張り付けは2人で行うと確実です。



6. 余分なグルーの除去
クライミングスキンからはみ出しているグルーを取り除きます。グルーは指でつまみ取ることができますが、ガムテープを使うと効率よく除去することができます。
左のイラストのようにグルーにガムテープを貼りつけ、エッジの部分(点線)を爪でなじませます。ガムテープをトップ側から10cmくらいづつはがしながらグルーを取り除きます。この時クライミングスキン内側の方向に引いてはがすようにするとグルーをスムーズに除去することができます。
※ グルーの除去には布テープ又はPPCテープを使用し、クラフトテープは使用しないでください。
※ テール側からテープをはがすと滑走面の毛が逆立ってしまいますので注意してください。




縦方向に軽くローラーがけする

7. グルーの仮固定
クライミングスキンを裏返してからグルーリニュートランスファーの台紙をはがします。(5)の行程でグルーの張り付けがズレてしまった場合は、この段階で修正します。下のイラストのようにグルーの付いていない部分の形に合わせて、残っているグルーリニュートランスファーをカットし、グルーの隙間や重なりができないようぴったりと張り付けて修正します。

重要:はがした台紙のシワを伸ばして再度張り付け、台紙ごしに30cmくらいづつ2~3回アイロン(高温)をあてて、軽く押さえるようにローラーをかけ仮固定します。
※ アイロンはティップループやテールフックのパーツを避け、クライミングスキンの滑走面のみにあててください。

仮固定が完了したら台紙をはがし、(5)の行程で取っておいた台紙に張り替えます。


グルーの張り付けがズレた状態


グルーを継ぎ足して修正する


アイロンを横向きに置いて加熱

8. グルーの定着
台紙の上からアイロン(高温)を置き、40~50秒間グルーを加熱します。この時アイロンを動かしたり押さえつけたりしないでください。 アイロンを外したらすぐ、両エッジから約5mm内側を横方向に10~15往復ローラーがけします。続いて、エッジ部分のグルーが薄くならないよう、水平を保ちながら縦方向に10~15往復ローラーがけします。
※ アイロンをあてる時間はあくまで目安です。状況に応じて長さを調整して下さい。長すぎるとクライミングスキンの縮みが大きくなり、短すぎるとグルーとクライミングスキンの間の気泡が多く残ります。


加熱した部分にローラーをかける


エッジより5mm内側をなじませる


エッジまでグルーを平滑に仕上げる


縦方向のローラーがけは、エッジ部のグルーが薄くならないようにローラーの水平を保ちます

直前に加熱した部分と約1cm重なるように、アイロンの前後を逆にして置き、(8)の行程を繰り返します。
※ アイロンがけはグルー面のみに行い、ティップループやテールフックのパーツのある部分は加熱しないでください。



9. グルーのトリミングと仕上げ
下に敷いてある新聞紙を取り除きダンボールを敷きます。クライミングスキンを裏返して滑走面を上向きに置き、カッターナイフでクライミングスキンからはみ出しているグルーを台紙ごと切り落とします。
※ カッターナイフの刃はよく切れる新品を使用してください。
※ 作業台や床を切らないよう、力加減に注意してください。


(2)の行程ではがしたセンターテープをもとどおり、クライミングスキンの中央に張り付けます。余ったセンターテープははさみでカットしてください。

(1)の行程で外したパーツがあればもとどおりにセットします。

(1)~(9)の作業をもう片方のクライミングスキンに施し、グルーリニューの完了です。