テクニカルインフォメーション

スピナーリーシュの危険な使い方

2011年11月15日時点の情報です

スピナーリーシュは、何ピッチにもおよぶアイス/アルパインルートにおいて、アイスアックスを落としてしまう致命的なミスを防ぐ落下防止の器具です。吸水性が低く、伸縮性に優れるウェビングを採用し、根元にねじれ止めのスイベルを備えるなど、使い勝手に優れたアイテムですが、使い方を誤ると、重大な事故に繋がる恐れがあります。今回はスピナーリーシュで「絶対にやってはいけない」2つの危険な使い方をご紹介します。

最もやってしまいがちなのが、スピナーリーシュをセルフビレイに使用することです(イラスト1)。スピナーリーシュはパーソナルアンカーシステム(セルフビレイの為のシステム)ではありません。パーソナルアンカーシステムは十分な強度を持っていますが、スピナーリーシュの強度はわずか2kN(約200kgf)に過ぎません。ビレイポイントでスリップしたり、墜落したりすると破断するおそれがあります。絶対に、スピナーリーシュをセルフビレイに使用しないで下さい。

エイドクライミングにおいて、デイジーチェーンに体重を預けてテスティングをしている姿を想像して下さい。勢いよく荷重を掛けたショックでプロテクションが外れれば、勢いよく自分に向かって飛んできます。飛んでくるのがペッカーのように鋭利なピトンなら、怪我をするかもしれません。
アイスクライミングでも、同様のことが起こりえます。スピナーリーシュに体重を預けてアックスが外れてしまうと、勢いよく自分に向かって飛んできます(イラスト2)。エイドクライミングで飛んでくるのはせいぜいピトンですが、アイスクライミングで飛んでくるのは破壊力のあるアイスアックスです。致命的な大怪我を負ってもおかしくありません。
スピナーリーシュには、絶対に体重を預けないで下さい。「どんなに」パンプしても、「どんなに」短い時間であってもです。

2011年秋より、縦走用アックス用のシングルバージョン「スリンガーリーシュ」が登場します。このモデルでも同様に、セルフビレイを取ったり、体重を預けたり絶対にしないで下さい。道具を正しく使うことが、クライミングのリスクを最小限に抑える第一歩です。