テクニカルインフォメーション

クランポンの選び方とフィッティング

2013年10月23日時点の情報です

クランポンはアイスアックスと並び、積雪期登山で最も重要なアイテムのひとつです。ブラックダイヤモンドではアイス/ミックスクライミングから縦走登山、簡単な雪山やスキーツアーまで、雪山全般に対応する5モデル・10タイプをラインナップしています。 ここではクランポンを選ぶ上でのポイントやフィッティングの仕方、使用上の注意など、役に立つ情報をご紹介します。

ブラックダイヤモンドクランポンは、スティンガー、サイボーグ、セラック(11-12本爪)、コンタクト、ネーベ(10本爪)の全5モデルで、それぞれ右図のような用途に分類できます。

※ブラックダイヤモンドクランポンは、適度に剛性のある登山靴、トレッキングブーツに装着して下さい。柔らかすぎるブーツに装着すると、歩行中に外れたり、センターバーが折れてしまうおそれがあります。

アイス/ミックスクライミング

該当モデル:スティンガー、サイボーグ

11-12本爪でフロントポイントは縦刃。縦刃は氷に刺さりやすく、細かいスタンスへの立ち込み力に優れます。フロントポイントはモノポイントに切り替えたり(※スティンガーはモノポイントのみ)、交換することができます。側面の爪は攻撃的な方向に突き出しており、食いつきを高める「刻み」が付けられています。

縦走登山~バリエーション

該当モデル:セラック

12本爪でフロントポイントは横刃。横刃は雪を面で捉えるので雪上歩行に適しています。側面の爪は歩行しやすい形状で、食いつきを高める「返し」が付けられています。様々な登山靴に装着できるように、プロ(ワンタッチ)、クリップ(セミワンタッチ)、ストラップの3種類の装着方法を選べます。

雪渓歩きや簡単な雪山
スキーツアー

該当モデル:コンタクト、ネーベ

10本爪でフロントポイントは横刃。12本爪より軽量ですが、雪面を捉える性能は12本爪に及びません。 アルミ製モデルのネーベは、ステンレス製のコンタクトより1ペア230gも軽量ですが、耐久性はコンタクトに及びません。軽さを活かしてスキーツアーや軽量化最優先の山行に適しています。

1-A: 縦刃のフロントポイント。モノポイントに切り替えたり、突き出し量を変えたり、交換することができます。

1-B: 横刃のフロントポイント。側面の爪には「かえし」が付けられています。

1-C: アルミ製クランポンのネーベ。スキーブーツ用にプロ(ワンタッチ)タイプも用意。

プロタイプ (ワンタッチ)

爪先を金属製ベイル、かかとをヒールレバーと金属製ベイルで固定するタイプ。前後に深いコバがあり、硬いミッドソールを内蔵した本格的登山靴に装着できます。ATブーツ、テレマークブーツにも装着可能。しっかりとした固定強度とクイックな装着性が特長です。

クリップタイプ (セミワンタッチ)

爪先を樹脂製ベイル、かかとをヒールレバーと金属製ベイルで固定するタイプ。かかとに深いコバがあり、中程度以上の硬さのミッドソールを内蔵した登山靴に装着できます。爪先にコバが無い登山靴にも装着でき、長時間の雪上歩行にも対応します。

ストラップタイプ

前後とも樹脂製ベイルで固定するタイプ。前後にコバが無い軽登山靴まで装着でき、多少しなっても外れません。その代わり固定強度や着脱性はプロやクリップに及ばず、急な氷雪壁やアイスクライミング等、テクニカルな用途には適しません。

2-A: プロタイプ

2-B: クリップタイプ

2-C: ストラップタイプ

靴とクランポンの相性が合っていることが大切です。特にプロ(ワンタッチ)タイプの場合、相性が合っていないと使用中に外れてしまうおそれがあります。靴のアッパーとシャンクの硬さは十分か、コバのカーブとトーベイルがフィットしているか、ヒールレバーをきちんと固定できるか、スキーブーツの場合、各種レバーが干渉しないかなど、実際に靴に合わせながら相性をチェックして下さい。

3-A: 爪先のコバのカーブとトーベイルがフィットしていることが大切。

3-B: スキーブーツの場合、ブーツのかかとにヒールレバーをきちんと固定でき、各種レバーと干渉しないことが大切。

1. クランポンの左右を確認して下さい。クランポンを地面に置いて上から見ると、センターバーの足マークの向きで確認できます。

2. アンクルストラップのダブルバックルの位置でも左右を確認できます。バックルは必ずクランポンの外側に位置します。

3. 爪先のコバにトーベイルをセットして下さい。コバのカーブとトーベイルがフィットしていることが大切です。

4. クランポンの長さを調整します。アジャストメントクリップを引き上げ、リアレールを前後にスライドさせて下さい。

5. クランポンはブーツよりわずかに短くなるようにして下さい。これによりヒールレバーを固定した時に前に押し出す力が働きます。

6. クランポンが長すぎると、がたつきが生じて外れやすくなったり、歩行時に引っ掛けやすくなります。

7. マイクロアジャスターを回転させて、ヒールレバーの固定強度を調整して下さい。

8. ヒールレバーをかかとのコバに押し当てて、パチンと固定されるまで完全に引き起こして下さい。

9. ヒールレバーの固定強度が弱い場合は一旦コバから外してマイクロアジャスターを時計回りに回して下さい。

10. アンクルストラップをユーロベイル(トーベイルが外れるのを防ぐ金属バー)のリングに通して折り返して下さい。

11. アンクルストラップをダブルバックルに通して折り返して下さい。

12. ストラップ末端は8-15cm残してカットして下さい。ゲイターを付けることも考えて、短く切りすぎないようにして下さい。

フロントポイントの突き出し量は靴の先端から2-3cm必要です。テレマークブーツは爪先のコバが登山靴より深いので、フロントポイントの突き出し量が登山靴の時より小さくなります。テレマークブーツには突き出し量を大きく取れるプロタイプを使用して下さい。トーベイルの位置を変えられるモデルなら、取り付け位置を後ろにして突き出し量を大きくできます。

5-A: フロントポイントは靴の先端から2-3cmの突き出し量が必要。

5-B: テレマークブーツの場合、トーベイルを後ろに下げて、突き出し量を増やす。

突き出し量を変えるためにトーベイルを取り外すには、スリングをベイルの根本に巻き付け、本体を踏みつけながらスリングを引っ張って下さい。取付も同様の方法で行って下さい。クランポンの爪で怪我をしないように、手袋をはめて作業して下さい。本体を押さえやすい、硬いソールの靴が作業しやすいでしょう。

6-A: トーベイルの根本にスリングを巻き付ける。

6-B: 本体をしっかりと踏みつけながらスリングを引っ張って外す。

スキーブーツなどコバの幅が広いブーツに取り付けるには、標準のトーベイルでは幅が足りない場合があります。トーベイル・ワイド(別売)に交換することで、幅広のブーツにも取り付けることができます。

7-A: 標準で付属しているトーベイル・スモール(左)と別売のトーベイル・ワイド(右)。

7-B: トーベイル・ワイドへの交換により、コバの幅が広いブーツにも装着できます。

傷みやすいセンターバーは別売しております。センターバーには厚みの違いでスタンダードとフレックスの2種類があり、スティンガー、サイボーグにはスタンダード(厚め)が、セラック、コンタクト、ネーベにはフレックス(薄め)が付属しています。#46(29cm)以上のブーツに合わせるには、ロングセンターバーに交換する必要があります。また、カーブの強いアルパインブーツに合わせるには、アシンメトリカルセンターバーに交換する必要があります。

8-A: センターバー各種。上からロング、 スタンダード、アシンメトリカル。

8-B: カーブの強いブーツに合わせるにはアシンメトリカルに交換する。

サイボーグは同梱の切り替えパーツを使って、デュアルからモノに切り替えることができます。ただし、モノに切り替えると、そのままではABSを装着できません。モノポイント用にもう1ペアABSを購入し、フロントポイントが当たる部分を糸鋸でカットする必要があります。

9-A: デュアルからモノへの切替。

9-B: モノポイント用にABSをもう1ペア購入し、モノポイントが当たる部分を糸鋸でカットする。

傷みやすいアンクルストラップはパーツ販売しております。プロタイプとクリップタイプの場合、ヒールレバーのスリットに通すだけです。ストラップタイプの場合は、古いストラップを切断して取り外し、付属のトリグライト(樹脂製バックル)を使って固定して下さい。

10-A: アンクルストラップ(別売)。手前のトリグライトは、ストラップタイプに取り付けるためのパーツ。

10-B: ストラップタイプに取り付ける場合、古いストラップを切断して取り外し、新しいストラップをトリグライトで取り付けます。

使い込んで摩耗した爪は鋭く研ぎ直して下さい。平ヤスリを使い手で研いで下さい。ステンレスは硬いので、難削材用の平ヤスリがお勧めです。グラインダーでの研磨は焼きが戻り金属が弱くなるので行わないで下さい。ポイントを研ぐ以外のいかなる改造もクランポンに加えないで下さい。

11-A: 難削材用の平ヤスリで研ぐ。グラインダーは使用しないで下さい。

パッキングの際には他のギアを傷つけないように、丈夫なナイロンバッグに収納して下さい。堅牢で排水性があるブラックダイヤモンドのクランポンバッグやツールボックスがお勧めです。

12-A: クランポンバッグ

12-B: ツールボックス