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雪崩対策装備の必要性を考える
#05_季節や行動上の注意点

雪崩対策装備はいつ、どのような山なら携帯すべきなのでしょうか。この問いに対して私たちは「雪山であれば常に携帯するべき」と考えています。
ここでは季節や行動上の注意点について、前3回で寄稿していただいた3名の山岳ガイドの方々に伺いました。各々馴染みのある山域を中心にコメントしていただいています。

天野さん
時期、降雪量(積雪量)、緯度などによるが、北アルプス(剣立山連峰・後立山連峰・槍穂高連峰)は11月~5月、谷川岳などの上越エリアでは12月~5月。春先になると雪が安定しやすくなり油断しがちになるが、5月でも雪崩死亡事故はけっこう起こっている。また地形の罠にも引き続き注意が必要。
笹倉さん
積雪期登山、特に降雪のある季節の場合は山域に限らず、雪崩対策ギアは携行している。それは雪崩が発生する可能性があるからだ。付け加えると、「持っていくか?持っていかないか?」の判断のステップを入れるとヒューマンエラーが起こるからでもある。西日本では鳥取県の大山(伯耆富士)でのガイド活動が多くなるが、必ず携行している。
花谷さん
甲斐駒ヶ岳で雪崩事故のリスクが最も高い場所はどこかと言われれば、それは黒戸尾根であると言える。七丈小屋から標高差200mほど続くダケカンバの疎林帯では、過去に何度も雪崩に流された例がある。特に積雪量が増える3月から4月にかけて雪崩発生事例が多く、私も何度も「ワッフ音」を聞いている。なぜ最もリスクが高いと言い切れるかというと、それは雪崩のトリガーとなりうる登山者の数が多いからである。しかも黒戸尾根の登山者の多くは、雪崩対策装備を携行していないのが現状だ。また非常にリスクが高い場所にトレースが入っていたりする。ぜひ積雪期に黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳を目指す皆様には、アイゼン歩行技術や体力を身につけることに加え、雪崩に対する知識を学び、雪崩対策装備の携行をお願いしたい。
積雪期に黒戸尾根から甲斐駒ヶ岳という大きな山を目指す登山者や、黄蓮谷クラスのような大きなルートを目指すクライマーが増えることはとても嬉しいことである。その一方で、昨年と一昨年は、一歩間違えれば死亡事故に繋がりかねない事案がいくつか発生した。話を聞く限りにおいては、当事者がもう少し山のコンディションを想像し、注意深く行動することで防げたのではないかと思うものばかりだ。雪崩は起こるときは一瞬で起こり、その結果が死を伴う重大なものにつながる危険性が極めて高い。雪崩に対する知識を身につけること、そして雪崩対策装備を携行することが大切な命を守ることに直結する。ぜひこの機会に、意識と行動をアップデートさせることをお願いしたい。
雪山登山者におすすめの雪崩対策装備
アルパインの名前が示す通り、このセットは登山者、クライマーのために作られた雪崩対策装備セットです。
ビーコン、ショベル、プローブの3点がセットになっています。
登山者やクライマーにとって重要な軽さやコンパクトさを追求し、手に取りやすい価格を実現する。
これが登山者やクライマーに対するブラックダイヤモンドの回答です。
スマートフォンより軽い超軽量のコンパクトビーコン「リーコンLTビーコン」、UIAA認証ショベルの中で最軽量のショベル「トランスファーLTショベル」、軽量で必要十分な長さのカーボンプローブ「クイックドローカーボンプローブ240」を組み合わせました。
セット重量は10本爪クランポンより軽い、800gを切る重量。しかも商品をそれぞれ単体で購入するより¥9,000もお得です。
もちろん、機能は十分なスペックを備えています。
シグナルサーチで捜索漏れの可能性を減らす円形の受信範囲、電子機器のノイズによるゴーストを拾わない優秀なフィルター性能、電磁気干渉を受けた際に発信アンテナを干渉の少ないアンテナに自動切替する自動アンテナ切り替え機能を搭載。安定した方向表示と正確な距離表示です。複数埋没時のマーク機能は複数マークしても受信範囲が狭まらない高度な信号処理能力をもち、重量は電池込で160gと超軽量ながら耐久性に優れたデザイン。2.6cmと薄く、シンプルなハーネスによりアンダーウェアの上に着けていても邪魔になりません。
さらに現代の雪崩ビーコン(雪崩トランシーバー)はスマートフォンのようにソフトウェアをアップデートすることで性能が向上します。
Bluetoothでスマートフォンアプリに接続すれば、アップデートはいつでもどこでも無料で行えます。アプリのデバイスチェック機能を使えば、リーコンLTが正常に機能しているか、いつでもご自身でチェックすることもできます。
シーズン前、シーズン中、シーズン終わりなど定期的にアプリに接続してアップデートがないか確認し、デバイスチェックをすることで常にリーコンLTを最新かつ正常な状態に保てます。
UIAA認証を取得したアバランチショベルの中では最軽量のショベルです。
わずか400gの超軽量ショベルですが、カラビナと同じ7075アルミニウム合金製でレスキューショベルとして十分な強度。ブレードが薄いため硬いデブリにも刺さりやすく、握りやすく凹んだ2段伸縮式T字グリップが効率の良い掘り出しを実現しています。
ブラックダイヤモンドプローブで最軽量225gのカーボンプローブ。
内蔵ケーブルは軽量で強度の高いケブラーコード、コードロック機構にはカラビナで使われているワイヤーゲート機構を採用し、軽量化と確実な操作性を両立しています。
ケブラーコードをプローブに巻きつければ、プローブがバラバラになることなく収納可能。スタッフバッグなしで携帯できるため、時間を争う現場で素早く取り出すことが可能です。(スタッフバッグは保管時に使用)
雪崩埋没者の平均的な埋没深は約1m前後のことが多く、プロービングには雪上に出ている長さが1mほど必要です。1m以上の埋没の可能性も考慮して、軽さとプロービングの作業性を両立する十分な長さ、240cmを採用しています。
捜索訓練は絶対に必要不可欠
アルパインAvyセーフティキットは優れた装備ですが、雪崩現場で冷静に使いこなすには定期的な練習が絶対に必要不可欠です。
自己流の練習はせっかくの装備を使いこなせないばかりか混乱する場合もあります。
各種団体やガイドの開催するAvSAR講習会を受講し訓練を積まれることを強くお勧めします。