登山靴の選び方
登山靴は怪我などのリスクから足をまもってくれる重要な装備。それだけに正しい知識で適切な靴選びをしたいところです。この記事では、靴選びにあたって知っておくべき大切な情報を整理してお届けします。
ひとえに山登りと言っても、低山ハイクから3000m級の縦走、アルパインクライミングなど、内容はさまざまです。お店の棚に並ぶ多くの登山靴は、多様な登山に最適な構造となるようひとつひとつ設計されています。そのため登山靴選びでは、実際にご自身がどのような登山をするかをイメージしながら、その用途に合ったシューズを選択する事が最も大切です。
このコンテンツでは始めに、登山靴の性能を★の数で表した性能比較表をご案内します。続いて、比較表を詳しく理解できるよう、解説をご用意しました。最後にコラムで、比較表を使ってどのように理想の一足にたどり着くかの一例を加えています。
なお、この記事では靴選びのもう一つの重要ポイントである「サイズ選び」については触れていません。サイズ選びについては後ほど別途記事をご用意致します。
目次
性能比較表
比較表を構成する各要素
要素1:縦走指数
★★★★★
日本アルプスなど3000m級のテント泊、縦走登山
★★★★
2000〜3000mの長時間行動を伴わない日帰り、小屋泊まり山行
★★★
本州の2000m級登山、日帰り〜1泊程度の小屋泊まり山行
★★
短い時間のトレッキング、1000m前後の日帰り登山
里山ハイク、自然路散策など
縦走指数が高い靴はテント泊装備を伴う長時間の縦走まで対応します。低山ハイクがメインの場合は縦走指数が低い軽快な靴を選ぶのもよいでしょう。また、縦走用途であっても経験豊富で脚力に優れる方は縦走指数の低い靴をあえて選ぶこともあります。この場合は軽さを重視しており、靴の性能に頼らなくても踏破できる自信があることが前提です。
さて、この”縦走指数”を決めるのは主に以下3項目です。いずれも足の負担を軽減し、長時間行動をサポートしてくれる大事なポイントです。

足首のサポート

ミッドカットやハイカットなど、足首までカバーして安定性をサポートする機能です。登山は不整地を歩くのでバランスを崩したり捻挫したりする可能性が高まりますが、足首をサポートして怪我を予防します。

各部の剛性

斜面を踏み込んだ際に足がブレないようサポートする性能です。登山靴の甲側(アッパー)やソールの剛性を強化することでこの性能が高まります。また、構造だけでなく使う素材によっても剛性は大きく変わり、耐久性にも影響します。

ソール構造

山道で安定したグリップを実現するソールです。縦走指数が高い登山靴は、山域や天候など、変化する状況にも対応力の高いオールラウンドな素材を採用。また泥はけの良いブロックなども特徴です。
アドバイス1
状況の変化は、予期せず起こるもの。突然の雨でぬかるんだ道は、乾いていた時よりずっと険しく感じるでしょう。雨量と地形によっては、登山道が沢のようになる事さえあります。剛性が高い靴はふんばりが効くため、このような悪天への備えとして有効です。
要素2:岩稜指数
★★★★★
岩稜帯が連続する険しい縦走路、バリエーションルート
★★★★
地図上の破線部など、荒れた登山道
★★★
短い簡単な岩場、くさり場の通過
★★
整備された登山道
整備された遊歩道
岩稜帯などの踏破性を示す指数です。岩稜指数が高い靴はより険しい岩場に対応します。登山靴の基本となる縦走指数に加えて、岩場での性能は岩稜指数も参考にしてください。
岩稜帯は緊張感のある動作の連続です。一瞬の気の緩みが重大な事故につながる急峻な岩稜帯では、長時間の集中力が求められます。このような登山道では特に岩稜指数の高いシューズが要求されるでしょう。また岩稜指数の高い登山靴は、雪面への蹴り込みにも優れており残雪期にも活躍します。岩稜指数は、以下の2点を元にして決まります。

ソールの剛性と種類

ソール剛性を高め、岩の上で滑りにくい素材を使用しています。鋭い岩角に立ちこむ際など、岩場での繊細な足置きのためのソール構造です。
クライミングゾーンを搭載したモデルもラインナップしています。クライミングゾーンとはつま先に配置された岩場の為のソールパターンです。岩とソールの間に隙間ができず安定して立ちこむ事が可能です。

フィット感の高さ

シューズと足の間にすき間が少ないほどフィット感の高い靴と言えます。フィット感が高い登山靴は靴の中でしっかりと足をおさえ、踏み込んだ際の力を逃しません。必要以上にすき間が増えると、踏み込んだ力が逃げてしまい、余計な力を使う原因になります。
アドバイス2
荷物の重量が増えるほど、靴は頼りなく感じます。そのため、沢山の装備を携行する際は注意が必要です。たとえ同じピークを目標にしていても、小屋泊まりとテント泊では必要な剛性が異なる事もあります。
要素3:軽量指数
登山靴の”軽さ”を表していますが、全ての登山靴を横並びにして重い靴の評価を低くしているわけではないので注意してください。例えばマウンテンカテゴリのリベレライトHD(660g)は、トレイルカテゴリのラッシュトレイルGTX(465g)より重いシューズですが、軽量指数最高の5に評価されています。その理由は”岩稜指数5のシューズとしては”非常に軽量だからです。このように比較表では、シューズカテゴリーの中で比較した重量を元に、軽量指数が表現されます。
要素4:耐久指数
自然環境で歩行を支え続ける登山靴は、全ての装備の中で最も傷みやすい山道具と言えます。そこで登山靴はアッパーやランドラバーなどの構造で耐久性を確保します。耐久指数が高ければ堅牢だと言えますが、同時に靴が重くなってしまうという側面があるので注意が必要です。軽量性と耐久性、それぞれの視点を持つことで靴選びの答えが近づくことでしょう。
※耐久指数が★★★以上のシューズはソールの交換に対応しています。

レザーアッパー

化学繊維と比べて耐久性の高い素材です。革製の登山靴は定期的な手入れでより長持ちします。

ランドラバー

靴の外周を保護するパーツです。岩などのスレから靴を守ります。
面積が広いものほど靴へのダメージを軽減できます。
比較表の使用例
ここまでの情報をもとに、靴選びの一例をご覧頂きましょう。「縦走指数」などの指標をどう活用して目的に合った一足にたどり着くのか、その考え方を参考にしていただければと思います。
Aさん
・30代
・登山歴2年
・これまでは関東周辺の1000m前後の山を登っていた。
・趣味のランニングなどで、定期的に体を動かしている。
Aさんは体力に自信があるから、はじめは軽い靴を探していた。谷川岳であれば縦走指数★★★のシューズで対応可能だ。しかし靴を選んでいくうちに、その先の展望も見えてきた。谷川岳で終わりではなく、翌年以降できれば八ヶ岳など、色々な山に登ってみたいというのがAさんの希望だった。そこで今回は、3000m級の山まで対応する縦走指数★★★★以上の靴を検討する事にした。この中でさらに、靴の用途を掘り下げていく。
Aさんの考えは、
・小屋泊まりの山に興味がある。テント泊はとりあえず予定していない。
・日本アルプスなどの急峻な山も今のところ予定していない。
・今履いているシューズも気に入っていて、低山用として使い分けたい。
つまりAさんにとって、当面の間で目標になる山は八ヶ岳の主峰赤岳だ。短いながらも稜線は岩場となっているから、岩稜指数も考慮する必要がある。
結果的にAさんはマルモラーダプロHDを選んだ。谷川岳はもちろん、赤岳などの3000m級登山まで対応するシューズだ。マルモラーダプロHDは、岩稜登りに特化した岩稜指数★★★★★のシューズと比べると、剛性を持ちながらなだらかな登山道も歩きやすいように設計されている。そのため、2000m級の登山を中心に、3000m級への挑戦も視野に入れているAさんの使い方に最適なモデルだ。加えて元々のシューズとマルモラーダプロHDとを履き分ける事で、低山から高山まで満遍なく対応できるシューズが用意できたのだった。
いかがだったでしょうか。中・長期的にどの山に登りたいか、荷物の重さはどのくらいか、自分の体力はどのくらいかなどをあらかじめ整理しておくことで、それまで捉えどころのなかった靴選びがスッキリとしてきたのではないでしょうか。
今回の記事と「登山靴のサイズ選び(現在準備中)」を参考にして、ご自分にピッタリの一足を見つけてみてください。
※掲載した情報はあくまでも一例です。登山者の技術、体力などによって適したシューズは異なる場合があります。


このページは2023年9月13日時点の情報を元に作成しています
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